下記の注意事項に気をつけて、下部温泉を心ゆくまで堪能して下さい。
温泉入浴指導員・温泉療養士 植松克年
01.その日の体調
「体調が何となくよくない」という時に入浴すると、入浴中や入浴後に身体の具合が悪くなることが多いようです。「入浴したい」という気持ちになれることが安全な入浴への第一歩です。
02.飲食
アルコールは末梢血管を拡げて血圧を下げる作用があります。
入浴により末梢血管はさらに拡張されるので、低血圧によるふらつき・立ちくらみを起こしやすくなりますし、眠気を催して溺死する危険性もあります。
また、酔いによる転倒事故なども予測されますので、飲酒後の入浴は避けるべきです。食後すぐの入浴も、食後に低血圧になる人もいますし、消化不良につながるおそれがあるので避けたほうがいいでしょう。
03.温度差
入浴に関連する死亡原因は11月から3月にかけての寒い時期に集中しています。
急激な温度差が心臓や脳血管などに障害をもたらすためだと考えられます。浴場から出る際に身体が冷えないように気を配ることが必要でしょう。
04.かけ湯
血圧の急上昇を防ぐためには、「かけ湯」をして身体をお湯に慣らす必要があります。
心臓から遠い手足から始め、腹部・頭部・胸部の順でお湯をかけていき、皮膚の血管を十分に拡張させておけば、浴槽に入った時に急激な血圧の上昇を避けることができます。
また、頭部にも十分お湯をかけることで、浴槽から出る時の立ちくらみを防ぐ効果もあります。
05.立ちくらみ
浴槽には這うようにゆっくり入り、出る時も頭を低くして這うように出るのが立ちくらみを予防するのに有効です。浴槽の中では身体が温まって血管が拡がり低血圧傾向になりますが、水圧で身体が圧迫されているので脳への血液の流れは保たれています。
ところが、一気に浴槽から出ると、水圧が急になくなるために重力の影響を受けて血液が足の方に下がってしまい、脳への血液の流れが急に減少して立ちくらみ(脳貧血)が起こります。降圧薬を服用している人は、特に血圧の低下し過ぎに注意しなければなりません。
06.半身浴
湯につかる姿勢は、高齢者や心臓・脳血管系に疾患のある人の場合、室温が温かく保てる環境ではみぞおちくらいまでの半身浴がお勧めです。
07.入浴時間
半身浴で湯に浸かっている時間は5~10分以内とします。額にうっすらと汗が出てくるくらいがちょうどいい時間です。心臓が早く打つようなるのは好ましくありません。
08.水分補給
1回の入浴による発汗量はおよそ200~400mlにもなり、水分以外にもナトリウム・カリウムなどの電解質が失われています。排尿による水分消失も考慮すると、入浴後には脱水状態になっていて、血液が濃縮され血管が詰まりやすくなっています。風呂から出たら喉が渇いていなくても、少なくともコップ1杯の水分を補給することが大切です。
下部の飲泉は、日本で初のミネラルウォーターでサミットなどにも使用された貴重なものです。この機会に是非ご賞味下さい。水分を補給したら30分くらいはのんびりと身体を休ませましょう。
09.2種類の泉質
下部温泉は、泉質が大きく分けて2種類になります。
1つは武田信玄公の隠し湯として昔から親しまれた「ぬる湯」で、切り傷や骨折、筋肉痛等に良い泉質です。もう1つは、平成18年5月に掘削した51℃という高温の「奥の湯」です。こちらは高アルカリ泉質なので、「ぬる湯」の持つ効能の他に美肌効果があります。2つの泉源が利用できる施設では、のぼせない程度に交互に入るのが良いでしょう。
10.「かけ流し」について
一般的に清潔感を求め、「かけ流し」が好まれる傾向がありますが、水流の関係で湯が全て入れ替わるのは難しく、入れ替わるとしても500リットルもの湯が必要と言われています。
また、衛生面の注意を怠ると通常よりレジオネラ菌の繁殖の危険性があります。よって衛生面への留意と、貴重な温泉資源の保全と有効的活用をするため、下部温泉は「かけ流し循環併用型」が主流となっています。